宮城谷先生の中国シリーズが大好き
で、一時期すごく読んでいたんです。それで、ちょっと宮城谷シリーズの短評をまとめてみました。
太公望
太公望といえば、釣り師というイメージがあったんですが
作品では、邦を釣るんですね。(ちょっと違いますが・・・)
上では、波乱万丈の生い立ちで、復讐の心で努力し
中では、和というか、許す心で葛藤し
下では、平等という思想の元で邦を作っていこうとした。
ということが書かれています。
斉っていう国を作った人なんですが
斉っていうのは、平等とかそういう意味だったんですね。
この作品は、宮城谷作品の中ではお奨め上位に来る作品です。
管仲
中国の戦国時代前の斉の国に、国を強くした管仲という宰相がいました。その管仲が成り上がって行ったストーリ。
いつものように、題名にある主人公の管仲よりも、その脇役である鮑叔の方が、とっても魅力的に感じるストーリ展開となっています。
しかし、いままで読んだ宮城谷作品の中では、青は藍より出でて・・という感じで、父と子のストーリかつ、父が成し遂げられないことを子が・・というようなどこかの国の首相のような話なのですが、今回は管仲は師で、鮑叔は弟子、弟子の方が人間的にも、策略的にも動きの早さもすごいのに、対決しなければならない時がやってきて、そして、運によって勝ってしまう。。という少し考えさせるというか、他の作品より少し暗い影を見せています。
実際の世の中で、あまり望まないのに昇格していくような感じにも。。思われて・・・サクセスストーリなんだけど何かたくさんの物を捨てていかないと、行けないことを考えさせられる本でした。
孟嘗君
全5巻ありますが・・・これもあっと言う間に読めちゃいます。
それくらい面白い。
中国の戦国時代、斉(さい)の国に猛嘗君という人がいて、その人が、後に大商人になる風洪 (白圭 )に拾われて・・・から始まるストーリは、宮城谷作品に共通するのかな?
晏子の時も晏弱の方のストーリが多かったけど、こちらも風洪のストーリの方が多く、面白い。
養父や父の方にどうしても強く惹かれてしまいます。
これは超おすすめ作品です。
沙中の回廊
時代的には「重耳」と「晏子」の間を埋める春秋時代の晋の国に出てきた名臣「士会」の話です。
若い時は、武術に励み・・・と、まぁ徳を積み重ねていくことの重要さ、自らに対する潔癖さ、私欲のなさ・・
どれもこれも、宮城谷作品は同じような主題で書かれているのですが
晏子に出てくると郤克 この本に出てくる郤克では、まるで違う人間のように思われる点が面白いですね。
WikiPediaで春秋戦国時代の人々
を調べてみるのも楽しいかも
歴史の活力 (文春文庫)
中国古典に出現する人や言葉と故事、日本の政財界人の言葉や出来事などが
書かれています。
リーダというか人の上に立つ人物が持つべき徳についてや、逆境・苦境での振る舞いなど面白い内容が書かれています。
歴史の活力というよりビジネス本みたい。。。
と、思って最後のページを見たら・・
”なお文庫化にあたり、書名「会社人間上昇学」を「歴史の活力」と変更した”
って書いてあった
おぃおぃ・・
でも、ビジネス本ってあんまり読後感がよくないのが多いのだけど、この本は、中国古典に興味のある人には割りと、明日から自分も仁・義・礼と徳を積むことにがんばろうと素直に思えるかも・・
長城のかげ
項羽と劉邦の時代をとりまく5人の人物を主人公にした短編5編が収められています。
逃げる:項羽の臣下である季布が・・・逃げる物語
長城のかげ:劉邦と共に生きた兄弟に等しい盧綰の生涯
石径の果て:石を投げたら劉邦にあたった・・陸賈の物語
風の消長:劉邦の子の肥の物語
満点の星:始皇帝、項羽、劉邦に使えた叔孫通という儒家の話です。
話としては、石径の果て、風の消長が面白かったです。
夏姫春秋
鄭の国の王の子に生まれた幼少から妖艶で、風をもつと言われた女性 夏姫の一生です。
宮城谷作品にありがちな、夏姫の魅力の話よりも夏姫が、暮らした国の歴史をつづってます。
鄭、陳、楚、晋の国の興亡で、特に楚の荘王の話が全体の主題となっています。
荘王は、覇者と帝王の間を彷徨う名君という感じで、荘王の故事が多いせいか・・宮城谷のほかの本よりも、有名な故事が多いかな?
直木賞受賞作品なんですが、最後が少し神がかり的な終わり方なので猛賞君や楽毅を後のような爽快感はなかったです。
これを書きながら・・・
私的中国史調査会
という凄いサイトを発見しました。
このサイトは、宮城谷作品を沢山読んでる人には
時代の関係や人の関係を復習したりするにはとても
いい感じのサイトです。
あと、宮城谷昌光の本という、宮城谷作品を全部読まれた方のサイトも発見。
この方の★と、私のお気に入り度がほとんど同じなので、
これから、参考にさせてもらおうっと。。
まだまだ沢山作品あるので・・・全部読み終わるのに、かなりかかりそう(^^;
香乱記
斉の国の話で、田氏 三兄弟の話です。
秦が強国で牛耳っている時に、徳を持って政治を行うという基本は同じです。
4巻あるけどあっと言う間に読めます。
晏子
宮城谷作品を初めて読んだのがこの本です。当時、人事担当をしていたので・・
なぜか会社の人事を見るようになったからなのか
こういうのって、凄く会社の仕組みと似ているように思いました。
志向的には、僕は、晏弱の方が好きかな?
多くの人が、この作品に感化されているのかもしれませんが・・・親子を通して国を治めていくというスタンス・・・僕には少しハードル高そうです。でも、この本も面白い(笑)
天空の舟―小説・伊尹伝
宮城谷の初期の作品なのかな?
中国夏王朝末期から、商(殷)初期にかけて活躍した政治家の伊尹(いいん)の生涯を描いた作品です。
小説の中では、伊尹(いいん)は、摯(し)と書かれています。
史実に忠実な宮城谷の中国古代小説ですが、さすがに紀元前1500年ごろの甲骨文字のころの話なので、小説としてのフィクションを感じさせずに楽しめる小説になっています。
介子推のように苦悩しながら書いたような雰囲気はなくとても楽しめる歴史小説です。
Wikipediaによると、竹書紀年では、もう少し違う評価のようですね。 伊尹
天空の舟 桑の木の舟なんだろな
介子推
重耳を読んだ方は、こちらも、きっと好きになるでしょう。
たぶん、歴史上の記録が少ないからか、宮城谷氏の作品にしては、非常に注釈が少なく、とても読みやすい小説になっています。
自由に書けた分、重耳で作ってしまった「棒使い」と「忠誠」というイメージに、自ら涙が出たと、あとがきに書いてありましたが、小説(フィクション)であるなら、これくらいすっきりと、読ませてくれる方が、読者としては爽やかです。中身も爽やかで、楽毅と同じくらい爽やかな、そして、感動的なストーリーだと思います。
重耳・楽毅が好きな人は、これも絶対好きでしょうね。
孟夏の太陽
晋(春秋)の重耳に使えたという趙衰から、晋を3分割して趙・韓・魏を作った趙無恤までの趙家の人々をそれぞれ短編の物語に閉じ込めた上で、それらの短編をひとつの本にして趙鞅が趙という国を建てようと夢を見たことで、悩んだ上に趙無恤を嗣子にしたことや、同時期の鄭(子産)や士会(沙中の回廊)では、優柔不断で何を考えているのかわからない趙盾も、この物語では、趙衰からの育てられ方の上に、あの気配り過ぎる性格が、人目には、何を考えているのかわからない行動になっていた様子など、細やかに、描かれている作品です。
「重耳」「子産」「沙中の回廊」とこの「孟夏の太陽」は、それぞれ読んで、それぞれの人物のことがやっとわかるという感じがしました。
玉人
宮城谷昌光の本としては珍しい短編集です。
しかも、すごく読みやすい(^^;
でも、なんというかエロ系の短編ですね。
指とかでは・・・ん・・・幸せってなんだろう?
みたいなテーマで、男が女を喜ばす指の話だったり。。
解説は、ミステリー作家の宮部みゆきが書いています。
全編ミステリーらしい。
春秋戦国時代の本を読みたい人にはお勧めじゃない本ですが・・・好きです(笑)
子産
宮城谷作品で、「吉川英治賞受賞作品」ですが・・・史実への挿話が多くて、特に上巻は読みにくい本でした。
春秋時代の鄭の国の執政だった(宰相ではなくあえて執政なのです)子産の話です。
子産
安子などと同じように上巻はほとんどが親の話で、子がどのように育って・・ということが描かれています。改革者としての子産の資質を描いたというより、どうしてそういう行動をとるようになったのか? 礼を踏まえた生き方を踏み外したものはどのような顛末になるのかを描いたという感じがします。。
はじめて宮城谷作品に触れる方は、この本は「楽毅」や「太公望」など新聞連載系の本から読んだ後に読む方がいいかも・・
重耳
こちらは晋の国の話で管仲と少し時代がかぶります。
上はとても面白い終わり方で・・・中が早く読みたくなります。
上の方は、伯候(狐氏のお父さん)その後は重耳の話というより伯候の子供達がとても魅力的に描かれています。
大器晩成の話というより・・宿命って感じがしました。
猛賞君や楽毅に比べると派手ではないですが
こういう判断も必要かな?っと思わせる世代越えの本です。
楽毅
宮城谷の本の中では、ものすごく読みやすい日本語です(^^;
今まで読んだ中では、一番面白かったです。
中山という小国の宰相の子として生まれ斉で遊学し、猛賞君と出会い
そして、亡国の敗将となったあと・・・中略
燕の卿となり斉を滅ぼし・・
というストーリーは4冊あっても、あっというまに読んでしまいます。
猛賞君もよかったけど、こちらの方が面白いと思います。
爽快なストーリー展開を読んでみたい方は、これが一番おすすめです!
中国古典の言行録
宮城谷の書いた中国古典で出てくる有名な言葉の解説本です。
自分を活かすため・日常に生きる・人脈を活かすため・リーダーのため経営戦略のため・・といったカテゴリで分けられて解説されています。
この本は、よく偉いさんがスピーチをする時のネタ本になっているのかな?
割と聞いたことのあるような言葉が書かれているのと、その言葉が出てきた背景や、その周辺の事情などもわかって面白い本です。
最近になってやっと
孔子-> 社会・人と人とが作る世界
孟子-> 自然が作る世界
という観念がわかってきて、中国の古典思想に対する考え方
などが少し形成されてきました(^^;
宮城谷の本でよく出てくる人を動かす徳や器が自分にあるのだろうか?
徳で行く方がいいのか?それとも自分のような者はもう少し小さい器で動く方がいいのか?ちょっと最近悩んでます。もともとは、自分さえよければ・・派だったのですが、徳のある上司の近くにいた経験からか・・自分自身もそのような、徳で人を動かす存在になれたら。。と自分独自の徳のスタイルを模索中です。
とは言ってもそれが吉と出るのか凶と出るのか??
そういう損得を考えているようじゃ・・まだまだ駄目だな(笑)
この本、何回も読み返しています。 次読む本どれにしようかな?
って考えた時、いつもなぜか手にとって、読むことにしています。
上のような感想から、少し、自分自身が変わってきたのと、何度呼んでも、覚えてないからか?新鮮に、ひとつひとつの言葉を受け取ることができます。
君子たるもの・・・などなどの話がありますが
すべてが君子(リーダ)の器になることはないと思いますが、自分自身がマネジメントしたり、されたりする中で、どんなポジションの人でも、昔から言われていることで残ってきた言葉というものは、皆が知っていて損することはないのではないかと、最近思います。
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