マグナム通信 Vol.2



2002川場スポーツマン2次予選応援編

 by さくらい

 今回私が担当したのは、現地までの運転手。中島氏が前日の土曜日遅くまで仕事な為、 少しでも休んで頂く目的で運転手となりました。 ビッグレースでは体調管理も大事なポイント。寝不足は最大の敵です。 

 そして、現地での仕事はモーターメンテナンスとタイヤの準備。ローター研磨やタイヤの接着と下地処理などです。これにより中島氏の仕事は車のメンテナンスとバッテリーの充電だけとなり、長い一日を考えると疲労度が全然違います。予選は全部で3回。一日を考えると比較的時間に余裕がありそうですが、マシントラブルやセッティング変更など発生すると一人ですべての作業をこなすのは大変です。出来たとしても精神的に余裕がなくなります。練習不足を補う意味で少しでも良い状態で走行してもらう為、細かい作業は私が担当しました。 基本的にモーター・タイヤ・インナーの選択は本人にしてもらいました。私はあくまでも言われた仕事をこなすだけでアドバイスなどはしないと決めていました。それは、あまり色々な情報を提供しすぎると本人が混乱するからです。車を走らせているのはあくまでも本人自身。大体セッティングの方向性は本人の頭の中では決まっているのに、他人がゴチャゴチャ言うと本人が混乱するだけ。隣の芝生は青く見えるもので、他人に言われるとそっちのほうが良く思えるようで、流されると迷路にはまるのが今までのパターン。そう言う意味でアドバイスはしない。しかし、これが後々問題になってしまいました。

 中島氏の支持通りモーターをメンテして、タイヤの準備。コントロールが朝一のヒートだとグリップが悪い為SOREXの32Rもあるかと考えていましたが、運良く7ヒート目だったので36Rで準備。前日の情報でインナーはヨコモの39Mが良いと聞いていた中島氏が「試したい」と、39Mを選択。さらにホイールがHPIの軽量ディッシュで決めていたのですが、これも当日情報でヨコモの6本スポークに変更。私もこの組み合わせなら大失敗は無いと思い賛成しました。 

そしてコントロールがスタート!

走り出した中島氏の車が明らかに遅い!「何だ!何だ!」とあせる私。考え付くのは私がメンテしたモーターが原因か?頭の中でごちゃごちゃ考えつつ走行を見守ると1周半で走行不能になりリタイヤ。4分のコントロール終了後、車を回収すると右リアのアイアームのターンバックルがアジャスターから外れていた。中島氏のTC3はリアのナックルにロッシ(?)製のものを使用し、ピロボールがキングピン位置から取っている為、ターンバックルがギリギリの長さまで伸ばされていたため外れた様だった。リタイヤの直接的原因はターンバックルだがストレートスピードが遅かったのも事実。こちらの原因はメンテの方法にあった。通常私が行っているメンテ方法でなく、中島氏の指示によって行ったメンテによってモーターの性能がいつものように出なかったようだ。しかし、このメンテ方法には私も賛成しており、この結果には少しショックだった。

 ここで二人が感じたのは「自分の試した事だけを信じ、試していない事はやらない事。」そう考えたはずだった・・・ 

予選1本目。

コントロールの失敗から作業をすべて通常に戻し、準備開始!タイヤは湿度が低いが日差しは強く気温も上がってきたので40Rを選択し、重い路面でも転がるタイヤをチョイス。インナーはテスト済みのゼノングリーン。これらを内リムの高いヨコモ製ホイールに組み合わせた。モーターはレース路面を想定し、トルクの強いソリッド。回転数があってもトルクの少ないモーターだと重いレース路面に回転が殺されスピードが出なくなってしまうので、トルクタイプを選んだ。モーターメンテは通常に戻し、コミュにナノカーボンを塗布して通電性を上げ、さらにトルク重視とした。 車の方は、アジャスターを長いものに変更してターンバックルが深くねじ込めるようにして対処。これで準備万端だった。

が、中島氏が突然モーターにKOハイパーブースターを取り付けた。

このブースター、先日私が2個壊していて内一つは火を噴いて燃えた経験のあるもの。事前の打ち合わせでは不安点が多いので使用しない話になっていたのに突然の行為。しかし、あくまで本人の選択なので私は黙って送り出しました。今思えばこの時、とめておけばと・・・・ 予選タイムアタック1回目。コントロールで記録が無い中島氏は7ヒートの最後のスタート。ゼッケン「1番」のコールで1コーナーに飛び出していった。今度はちゃんとスピードが出ている。バックストレートで気持ちの良い加速を見せる。モーターのメンテをした私としては一安心。しかし、どうもリアのグリップが不足しているようで車が不安定な様子。先日までの練習時とは路面が変わりフロントグリップが上がり車のバランスが崩れたようだ。しかし、中島氏はアクセルワークで対応し頑張って走行を続ける。何とか8分走りきってほしいと祈っている矢先、8周目のバックストレートで異変が起きた。

中島氏の車から煙が出ている。

そのままインフィールドセクションを走行し9周目に入るが、さらに激しい黒煙と炎が上がり「ゼッケン1番停車してください。」のアナウンスで9周目リタイヤとなった。予選終了後車を回収すると炎上の原因はやはりハイパーブースターだったが、なぜ燃えたかは解らなかった。この事件でスッカリ有名人になり「燃える男、中島」と、一日言われる羽目になった。 

コントロールと予選1本目と、まともに走りきっていないのでかなり追い詰められた状態になった。しかし、タイヤやモーターは問題なさそう。ダンパーのオイル・バネ・取付け角度を変更し、気温が40度近くまで上がったのでバッテリーを熱に強いとされるサンヨーHVに変更した。(さっきは金パナ) 予選は後2回あるとはいえ、8分間走りきって記録が欲しい所。祈る気持ちで私は車をグリットに着けた。 

予選タイムアタック2回目。

スタートして間もなく、気負いからか小さいミスはあったがすぐに気を取り戻し自分のペースを掴んだ様子。金パナとHVのバッテリーの性格の違いか1本目に比べ、派手さは無いがアベレージは安定している感じ。リアグリップも少し軽いが1本目より押さえられるようだった。運転台真下の最終シケインの切り返しでリアが滑り出したがカウンターをあてて姿勢の乱れを最小限に抑える技術と精神力は「さすがチャンプ中島」と、言わせるほど見事だった。そして見事に8分間走り切りタイムを残した。

記録24周8分4秒。

ブービーから一気に21位まで上げてきた。予選通過枠は38名なので、まだ安心は出来ないが細かい修正点もあり、克服できれば25周も夢ではなくなった。 予選2回目のタイムは練習も含め自己ベストの記録。目標でもあった24周8分シングルが出せた事による満足感と、最初の記録を出せた安心感などで場の空気は一気に和んだ。 事前の情報で25周がでればトップ10入り出来る様な話だったので気温が下がり、路面コンディションの良くなる予選3回目で一気に上位に食い込むチャンスが出てきた。逆に他車もタイムを上げて来る事は想像できるので、中島氏本人も自らの記録を少しでも更新しないと予選落ちしてしまう可能性がある為、攻めの気持ちと守りの気持ちが複雑に入り乱れた。 川場のオイル路面は夕方、日が沈むとグリップが上がり劇的にタイムが良くなる。みんな勝負は予選3回目だと言う事は分かっている。夏の川場の夕立も心配だが今日は湿度も低いし、雲の量からして雨は無さそうだ。 

私は3回目の予選に向けて準備を始めた。気温・路面温度が下がってきていたがグリップは上がることは分かっていたので40Rにゼノンのグリーンは変更しなかった。ただし、ホイールの剛性を上げる為6本スポークからディッシュに変更した。ここである事に気が付いた。いつもはモーターのメンテナンスをしてからタイヤの準備をするのに、今回だけ順番が逆になってしまった。中島氏の作業順序に支障が出ないか心配だったが、氏は全然気づいていないようだった。車のセット的には2回目と変更は無い!バッテリーは気温が下がってきたので、ストレートで伸びのある金パナに変更。 これで準備完了!あとは充電が終わるのを待つだけとなった。

時間的に余裕の出来た私は下のピットにいる宮崎氏・富永氏のところに行ってみた。

両氏と話をするとタイムはおろか、まともに走れない状態らしい。私はまともに走ってたんですが(笑)

セッティングについて、あれこれ言える身分ではないで黙っていた。すると、そこに本田氏がやって来て二人にセッティングのアドバイスをしてくれた。本田氏は人の車が走行しているのを見ただけで悪いところ指摘し的確にアドバイスできる不思議な人だ。本田氏に言わせると「経験の量が違う!」との事。宮崎氏と富永氏はアドバイスを聞いてセッティングを少し変更した。そんな中、ふと富永氏の車に付いているタイヤを見ると白缶がすでに塗布してあった。富永氏は11ヒートで、まだ1時間以上時間がある。これはどう考えても早すぎる。さらに話をすると白缶が乾いてきたら拭き取るだけでスタートさせていたらしい。人にもよるが私の場合、白缶でタイヤを軟らかくしたらクリーナーですべて拭き取ることにしている。少しでも残っているとオイル路面の場合ヌルヌル滑ってしまう感覚があるからだ。そしてクリーナーで拭き取った後は京商のバギーグリップを塗布し、2〜3分で乾いたらそのまま走行させる。

富永氏に「バギーグリップは?」と聞くと「持っていません。」と返事。

私は自分のバギーグリップを取ってきて、使用済みのタイヤに塗って手での感触の違いを確かめてもらった。これは自分の経験からで、人に良いと言われてもなかなか信じられないもの。無理やり薦めることはしないで、違いを見てもらって使うかどうかは本人に判断してもらった。

そうこうしていると、中島氏の7ヒートが近くなり私はピットに戻った。 予選タイムアタック3回目。先ほどタイムを残したので今回は2番手スタートだった。今回は不安要素が無く、車出しをした私も安心感があった。「出来れば25周を!」と欲をかいて見守っていた。今思えば中島氏も同じ事を考えていたのかもしれない。それはスタート直後の中島氏の走りを見てすぐ理解できた。 

3回目スタート。

第一コーナー・2コーナーと加速・グリップ・トラクションと悪くなさそう。しかし、グリップが良すぎるのかコーナーのインぎりぎりを走行している。それだけではない、中島氏が攻めの走りをしている。これが良い方に出てくれればいいのだが、次の瞬間縁石に乗り上げ車は横転した。着地には成功したが数秒のタイムロス。中島氏はロスを挽回しようとさらに攻める。こうなると大体悪いほうに出るのが常。その後も同じような転倒を何度か繰り返した。しかし、ここからが中島氏のすごい所。グッと集中力をあげ、車の癖を掴み、ドライブで対応。驚異的なラップで周回を重ねた。「このまま行けば自己記録を更新出来るかも?」と思った直後、車に異変が起きた。17周目に入ってバックストレートを走行中、

またしても車から煙が出てきた。

中島氏はすぐに車を止めた。3回目の記録は17周5分44秒だった。車を回収して調べると今回はモーター自身が燃えたようだった。ローターの3極のうち1極の巻き線が真っ黒になっていた。こういう事になったのは、初めてだったが噂では聞いていた。今年になって使用が認められたオープン式の23ターンで、巻き線が燃えただの切れただの話では聞いていた。まさかこんな大事な時に自分のメンテしたモーターに出るとは思わなかった。原因は富永氏の話によると磁力が強力にアップしたオープン式の23ターンがストレートなどで高回転になった際、モーター自身が発電機となり、バッテリーの電圧を超える電気を発生し行き場の無い電気が巻き線に負担をかけて切れたり燃えたりするとの事だった。(多分こんな話だったような?)

たぶん、巻き線の絶縁耐圧が、高温と、モーターが高回転した時に自分で発生する自己起電力より低くて絶縁が保てなくなってショートするためだと思います。温度のせいもあると思うのですが、きっと磁力が強くなりすぎているからだとおもうんですよね。JMRCAの公認モーターって、コアレスとか、アルミコアとか採用しちゃだめなのかな?自己起電力による絶縁不良だとしたら、発電しにくくすればいいんだし元々磁石の力が強いのでトルクもそれほど弱くならず、コイルのL分が減って立ち上がりもよくなると思うのですが。。どうなんだろ?分割コアがだめだとしたら、これもダメなのかな?

また、後日聞いた話ではメーカーサイドもこの症状は分かっていて最近のロットのモーターは巻き線が耐熱の物に変更されているそうです。中島氏の話では煙が出る数周前から車がノー・コントロール状態に時々見舞われていたらしい。その時すでにモーターは悲鳴を上げていたのかもしれない。中島氏本人は煙が見えて車を止めたのではなく、操縦不能になり他車に迷惑がかかるのでリタイアしたらしい。 3回目の予選でタイムが更新できなかった中島氏だが、後はすべての予選が終了し成績が発表されるのを待つしかなかった。他のドライバーの走りが気になったが私はあえて見なかった。 

すべての予選が終了し時間の出来た私は、さきほど富永氏に車出しを頼まれていたので下のピットに向かった。すでに計量も済み、ポンダを受け取った富永氏が待っていたので車を受け取り、スタートを待った。

タイヤにはバギーグリップが塗ってあったので富永氏に一言アドバイスした。「1コーナーで右に曲がった時、今までと違う感覚で曲がりますから、2コーナーからはその感覚に合わせてガンガンいってくださいね!」タイヤを触った感じが良かったので富永氏の走りに、かなり期待が持てた。 そして富永氏最後のチャレンジが始まった。1コーナーに飛び込む車は張り付く様に右カーブを抜けていった。「よし!」私は思わず声が出た。2コーナーに入ってもピタッとインに付き左カーブを抜けていった。どうやら好感触のようだ。氏の走りは十分な練習でコースに慣れた様子で安定していた。「これは期待できる。」と、心の中でワクワクしていた。しかし、どうにもストレートのスピードがイマイチのび無い。それとは反対にイン・フィールドではトラクションが掛かって、良い走りをしている。1周トータルでは悪くない。他車と同じペースで周回を重ねている。しかし、13周したころで、後ろからペースの速い車が迫ってきた。極端にスピード差は無いので富永氏も譲るタイミングが掴めない様子だ。そして14周に入り、接近したままイン・フィールドに入ってコース中央の左コーナーで富永氏の414Mが左タイヤを縁石に乗り上げ横転。しかし、うまく着地してほとんどロスなく復帰して走行を続けた。その後アクシデントもなく富永氏お得意の淡々とした走りで8分間を走破した。

残念ながら予選ボーダーには届かなかったが富永氏の自己ベストは出た様だった。 そうそう2秒速くなってました(^^;

そしてすべての予選が終了して集計を待つだけとなった。発表を待つ間、皆それぞれ片付けをしながら談笑していた。緊張から開放され皆和やかな表情をしていた。 そのうち誰かが成績が張り出されている事を教えてくれ、急いで見に行った。緊張の瞬間だった。中島氏はタイムを更新していないので、順位が落ちているのは確実だった。あとはボーダーの38位までに入っているかだ。あせる気持ちを抑えつつ中島氏の名前を探した。すると24位に氏の名前があった。

2次予選通過である。「これで谷田部に行ける。」私はホッとした。 まるで自分のことのようですね(笑)

 ピットに戻り、通過であることを中島氏に伝えると嬉しい様な、疲れた様な不思議な表情をしていた。 中島氏は時間が取れず今日まで川場での練習はほとんどしていなかった。実質練習回数1回のみ。あと2回ばかり川場まで来たが雨に降られたりして3パックほどしかは走れなかった。 

知人たちが何回練習に行っただの、何周しただの、何秒出しただの聞かされていて、練習できない自分が不安な様だった。順位はともあれ通過すれば良い2次予選。本選の切符が手に入り安心したと言うのが、あの表情になったのだろう。 

こうして振り返ると、特別変わったことはしていません。ただ、ビック・レース独特の路面変化への対応と経験が、ほんのチョッと有るか無いかで大きく変わるのかもしれません。 本選の行われる谷田部では、また悩まされる事になるでしょう。その時、波に乗れるか、飲み込まれるかで成績は変わる事になるでしょう。

一番大事なのは、友といえる友人が居ることと、バカ話も必要だと言うことでしょうか?

冗談話の中にもヒントはあるかもしれない・・・・ 冗談しかない人もいますが・・・って俺か?(爆笑)

終わり

う〜ん、人それぞれ見るところが違うんですね!(笑) 私も、いろいろ経験がつめるといいなぁ〜 しかしチームっていいですね。 1次予選の時といい、ほんと仲いいチームです。チームマグナム。。 ところで、今でこそいろいろ情報交換とかするようになったんですが 昔は、チームマグナムって私にとってはすっごくエキスパートな集団だったんですよね。 <そいじゃぁ〜今は違うのか? いやいややっぱり凄いチームっす(笑)

この色の文字はとみながが追加してます(笑)


Home Page
このページに関するお問い合わせは、tominaga@shrocc.comまで